お庭ばなし

本当にあった庭の思い出。

雨の日にムカデが降る家

 

これは九州にある実家の庭の思い出話です。

虫が苦手な方はご注意ください。

 

実家はかなり古い家だったので隙間だらけでした。

なんせ断熱材という代物が使われていないので、床板の下は地面が見える部屋があるくらい。

 

築100年だ、という話を何年も父に聞かされていたので本当の築年数がぼやけてますが、まあ古いことは確かです。

古民家だったらお洒落でいいんですけど、平屋のなんのへんてつもない普通の家です。

 

で、時々父が怖いことを言うのです。

 

「雨の日は気をつけろ。ムカデが落ちてくるからな」

 

そんなことは知ってました。

夜、布団の上にぼとっと何かが落ちるのです。

眠いし気のせいだと思いたいけど

絶対なにかが落ちた音がする。

 

こーゆーときはさっと飛び起きて電気をつけます。

 

すると100%の確率で急に明るくなってびっくりしたムカデがふとんの上で固まってるのです。

 

ムカデが落ちる部屋は決まっていて、それでも2段ベッドの下の段にいるときは大丈夫でしたが

たたみに直接敷いてるとよく落ちてきました。

 

ムカデが落ちてきたらおかーさーん!

と叫びます。

別の部屋にいる母が箒をもって駆けつけてくれます。

 

「ああいやだ!気持ち悪い!」

と言いながらバシバシ叩き殺して

庭にぽいっと捨てます。

 

自分でも箒でぽいっと庭に掃き出してました。遠慮なくバシバシ叩いてね。

 

なんでこうなるかというと

雨の日は濡れたくないムカデが家に入り込むんだそうです。

んで、どんどん高いところへ登ろうとして天井にたどりつき

自分の重さで落ちる。

そこにちょうどよく私の布団があって

電気をつけた私が悲鳴をあげるのです。

 

でも父は殺すのは可哀そうだっていうんです。おいおい。娘が噛まれてもいいの?

 

父はいつものようにニタニタ笑いながらこんな話をしてくれました。

「昔、寝てたら足の親指が痛くて目が覚めたんだ。おかしいな、どう考えても足の親指が痛い。そう思って起き上がってみたらな」

 

「俺の足の親指にムカデがしがみついて一生懸命かじってるんだよ」

「ぎえええええ!」悲鳴をあげる私。

「痛かったよ~!ムカデは痛いぞ♪」

なぜか嬉しそうな父。

「それでムカデはどうしたの?」

「逃げたよ」

「は?なんでやっつけないの?」

「だってぇムカデだって一生懸命生きてるんだから。可哀そう」

(はあああああ!?何言ってんの?)

 

とまあこんな様子で、

ムカデが入ってこれないように家をリフォームするとか一切考えない父でした。

 

ムカデが降ってくる部屋なんてホラーでしかないんですけど。

 

とまあそんな実家ですから

私が子どもと帰省するときは、子どもがすっぽり入る大きな蚊帳を買って送りつけてから帰省しました。

 

で、子が蚊帳に入りきらなくなって

久しぶりに夏に帰省したら夜、懐かしいあの音が。

もうすっかり大人になって母になっていた私は思わずこう叫びました。

 

「おかーさーん!!」